須川展也 meets ロン・カーター 「ａｉｒ」
　東芝EMI/ TOCT24306
　（00/4/26発売）

須川さんちょっとおとなしいかな、というのが第一印象。とくに最初のほうのゆっくりした曲が、何か力をセーブして吹いているような印象がありました。5曲め「サマータイム」あたりからはいつものノリが戻ってきますが、「全部出し切る」ということにはならないまま終わりました。まあ、こういうソフィスティケートされた味わいというのは最初からの狙いでありましょう。ストリングスの音も控えめで、「ゴージャス」というよりは「丁寧」な作りのアルバムです。（ちなみに「スガワチック・サウンド」が全開となった演奏としては、私見ではオーケストラ金沢との共演アルバム「エストレリータ」の中の小品いくつかが挙げられます）

こういう「異種格闘技」的アルバムでは、その枠の中でどれだけ暴れられるかという「編曲」の枠組みが結構重要になってきますが、通して聴いてみるとロン・カーター側が推薦したというボブ・フリードマンの編曲したトラックがやはり見事ですね。奇をてらわない外見の中に何げに斬新なアイディアが入っています。「ハフナー」なんか、遊びの要素とモーツァルトのエスプリがちゃんと両立しているのは驚異。

それにしても、贅沢なアルバムではあります。「生」で聴く（見る）のがますます楽しみになりました。
　（2000.4.28記）