２００１年

９月３０日

「なめら〜か」練習。みなとみらいでの、本番前最後の練習。朝９時からのカルテット（アルフレッド・リード作品）の合わせに始まって、夕方４時半の解散までほとんど吹きづくめ。疲れた。
練習場に楽友協会パートリーダーのＫさんが現れ、練習を聴いて、的確きわまるサジェスチョンをばしばしと飛ばす。さすが。

23日の録音（MD）を聴く。…感想：チューニングはちゃんとしましょう（爆）。

９月２８日

紀尾井シンフォニエッタ東京（ＫＳＴ）第31回定期演奏会を聴く（紀尾井ホール）。

もともとのコンセプトとしては本日の指揮者・尾高忠明の父である尾高尚忠の没後50年を記念したプログラムだったのだが、はからずも先日の米国テロの犠牲者をはじめとする、普遍的な「死者を悼む」曲目となった。
こういう演奏会については多くを語りたくない。実演では初めて聴くフォーレのレクイエム1893年版初稿をはじめ、私自身のマニア的興味には事欠かない曲目ではあったが、今はそんなことはどうでもよい。10代の頃から大好きで熟知しているつもりだったこのフォーレのレクイエムという曲が、これほど真実味をもって耳に届いてきたことは未だかつてなかったことだ。コンサートホールではなく、本当に小さな教会の中で聴いているかのような厳かさと敬虔があった。…

フォーレのレクイエム1893年版には、日本フォーレ協会が制作しジャン・フルネが指揮をした、素晴らしいCDが存在する（カメラータ・トウキョウ/25CM-563）。せっかく自分のホームページの中でジャン・フルネについて一項を設けているのに、このCDの紹介をしていなかったのは迂闊としか言いようがない。フルネの新譜はこの1年でまたいくつか出たことだし、そろそろ更新をしなければ。（って、いったいいつのことになるやら…）

９月２４日

今日は出社して仕事をせざるを得なかった。最近三連休が多くて、そのくせ仕事の量は減らないもので、結局休日出勤になってしまう。何がハッピーマンデーじゃ。

帰りがけに閉店間際の山野楽器に寄る。チラシだけはあちこちで見かけていた小串俊寿さんの新譜CD「Happy Sax Paradise」の現物をやっと発見。買って帰って早速聴く。面白い！Happy！マニアからフツーの素人さんまで、どんな人が聴いてもどんなふうにも楽しめ、しかも技巧レベルはなにげに恐ろしく高い。さすが小串さん。アンハッピーマンデー転じてHappyな気分で1日を終えることが出来て良かった。

一昨日買った東京サクソフォンアンサンブルのCDも聴いてみる。…そう、この音だ。80年代中頃の音がする。日本の、というか東京のプロのサクソフォンカルテット界が、キャトルロゾーと東京ＳＥが二大巨頭で、アルモが新興勢力、トルヴェールは公式にはまだ存在していなかったという時代。自分自身が一番ひたむきにサックスという楽器を練習していた時期だったし、いろいろなコンサートや講習会に通い、見聞きしたものすべてが栄養となっていた時代だった。あれから20年近くが経ったけれども、あの頃の一種独特の熱気のエコーをここには聴き取ることができる。しかし教育用の曲目とはいえ、なんと今なお感嘆すべき要素をたくさん備えた演奏であることか。この時代があってこその「今」であり、「今」だからこそ判る「あの頃」でもある。

９月２３日

横浜楽友協会室内楽演奏会本番。会場は去年と同じ、本郷台の栄区民文化センター「リリス」。朝10時45分リハ開始なので、8時半頃家を出る。晩秋を思わせるひんやりとした快晴。東横線の多摩川鉄橋から富士山がくっきりと見える。

「なめら〜か」曲目の『ホルベルク組曲』と、合同演奏のゲネプロを無難に終わらせて、午後1時、開演。金管や木管のアンサンブルは勿論、サクソフォンやユーフォニアムのソロ演奏、弦楽器が加わってのモーツァルトのオーボエ四重奏曲、ピアノ連弾、合唱（ゲスト）まで出てくる多種多彩な出演者陣。しかもこれがまた皆、結構巧いのである。ほとんど内輪の本番でお客さんが少ないのが勿体ない程で、吹奏楽団主催の演奏会とはとても思えない。まあ、そもそも横浜楽友協会吹奏楽団というところは「吹奏楽団じゃない（笑）」のだが。

本番はほとんどトリ近く。その頃にはもう時間が押しまくっていて、そのくせホルベルク組曲全部なんていう長い曲をやらせて戴いて恐縮の限りだったが、自分たちの演奏会３週間前というこのタイミングで本番にかけることが出来たのは収穫だった。
鈴市さん編曲の合同演奏用『ラデツキー行進曲』、１パート１名にパートが割り振られており、演奏者数に変更が発生すると改版されて確定人数分のパート数に変更されるという（本日の演奏はver1.1A）、グレインジャーの伸縮自在編曲もかくやという譜面なのであります。17th & 18th Saxophoneなんていう楽譜を見たときにはびっくりしたなあ。しかしどのような人数だろうと必ず1人1パートを設定するというコダワリには共感を覚える。室内楽なんだもの、当り前といえば当り前なのだが、その「当り前」が実現している状態というのが実は稀なことだったりする訳で…
『ラデツキー』の演奏は遅めのテンポ設定がなかなかうまくいった。ソプラノのトップのＫさんのフラジオばしばしのプレイはまるでソプラニーノみたいだ。合唱団の人だろうか、客席からブラボーが聞こえた。終演予定の午後5時を相当超過して終演。

打ち上げはホール内のレストランにて。毎度ながら楽しい演奏会だった。年にフル編成の演奏会を２回と、このような何でもありの室内楽演奏会を２回もやっているというのはすごいことだ、とつくづく感心してしまう。
さて、お次は自分たちの番だが。

９月２２日

いろいろ用事を片づけに出かけたついでに渋谷タワレコに寄る。
グラモフォン・ウィンドアンサンブルと称する怪しげな管アンサンブルのＣＤシリーズが９月に出ることは知っていたが、実物を初めて見た。SaxアンサンブルのＣＤは、なんと1984年録音の東京サクソフォン・アンサンブル（Ａ宗貞啓二、Ｔ市川豊の最強ライン時代）の演奏だった！　たしか当時、学校教材向けのＬＰとして楽譜とセットで発売されたもので、一般のレコード店には出回らなかった筈のものだ。収録曲のハイドンの「皇帝」とかチャイコフスキーの「４羽の白鳥の踊り」とか、ハイケンスのセレナードとかは楽譜は今でもよく見かける。しかしこんなものが今頃になってよく出たもんだ。即買ったのは言うまでもない。

Ades、Addaといった最近入手困難状態の続いていたフランスのレーベルのＣＤが相次いで再販されているようで、店頭に特設コーナーが出来ていた。フランス物の珍しいレパートリーや、昔のフランス流の演奏スタイルの研究には欠かせない音源が多いレーベルで、大変喜ばしい。初出時に入手し損ねたAdes原盤のジャック・フェブリエのラヴェル/ピアノ曲全集（２枚）を購入。

アクタスにも寄る。下地啓二氏のソロＣＤ（夏頃から出るというウワサだったもの）「愛する人への歌」を発見、これも狂喜して買って帰る。…こういう率直で潔癖で、言いたいことをスパッと言い切った確固たるSaxの演奏というのは久しぶりに聴くような気がする。下地さん健在なり！選曲からジャケットデザイン、ライナーノートの文章に至るまで、隅々まで下地さんカラーが感じられるアルバムだ。

９月１９日

Ｎ響定期を聴く（サントリーホール）。

指揮は広上淳一。久々のＮ響登場で、前回97年の定期登場時に聴いた『ペール・ギュント』が今でも忘れられない新鮮な演奏だっただけに、楽しみにしていた。
ソリストは当初ヤーノシュ・シュタルケルの予定で、プログラムにもそう載っているが、テロ事件の影響で飛行機が飛ばず、直前にキャンセルになってしまった。残念！シュタルケル聴きたかった。代わりに先週のＣ定期（準メルクルの指揮だったので行くつもりだったが仕事で行けなかった）でボッケリーニを弾いた若いチェリスト（24歳）が滞日を延長して代役として登場。ほとんど周知期間がなかったとは思えないような堂々たる演奏（当然暗譜）で、ブラヴォーも盛んに飛んでいた。うーむ、ソリストって凄いなあ。
メインプロの巨人。見ていて吹き出してしまいそうな大袈裟な身振りの指揮姿は相変わらずだが、出てくる音楽は遅めのテンポの実にオーソドックスなものだ。それでいて思わずスコアを見て確認したくなるような細部のテンポや強弱の斬新な変化もある。だからマーラーは面白い。演奏自体は普段のＮ響に比べたらアンサンブルの崩れる箇所が多かったような気がする。明日（２回公演の２日め）のほうが良くなりそうかも。

ティンパニの百瀬さん、オーボエの小島さんが９月限りで定年退職とのこと。
百瀬さんは私にとってはまず「音の輪」の客演指揮者としての存在だった。練習中の「何を言っているのかサッパリ分からないけど何を言いたいのかはよく分かる」ハチャメチャな指示・言動にはファンが多かったし、さんざん楽しませてもらったものだ。この人のツテのおかげで、音の輪のリハーサルを何回か高輪のＮ響練習場で行うことが出来たのも貴重な経験だった。
その昔の「音の輪」で、小串さんをソリストにリード編曲の「ハーレム・ノクターン」（A.Sax & Band）をやった年の練習時、私が吹いたソロの代吹きがやたらとウケて、これまた代振りだった百瀬先生に「このまま本番もやれば、」と言われたなんてこともあったな〜。最近機会がなくなってしまったが、もう一度百瀬センセの指揮で吹いてみたいと思う。

オーボエの小島さん。私が生まれて初めてお金を払ってＮ響を聴いた25年前の青少年コンサート（そういうコンサートシリーズが当時あった。ＮＨＫホールの３階席で500円だったと思う）のとき、シベリウスの『トゥオネラの白鳥』が曲目にあって、イングリッシュホルン独奏小島葉子とクレジットされていた。クラシックをまともに聴き始めたばかりの中学２年生にとってはあまりにも新鮮で理解を超えた音楽で、ショックに近い鮮烈な印象が残ったのだった。後日ＦＭで放送されたその日の演奏はエアチェックしてよく聴いていた（メインプロがシベリウスの２番で、弘中孝がグリーグのピアノ協奏曲を弾く北欧物プログラムだった。いわゆるクラシックの本流からちょっと外れたところを好む自分の音楽的嗜好はその頃からだったらしい）。当時の小島さんは今の自分よりも若かったことになる。昔話失礼しました。

９月１８日

夜の宮前平中学校にて、久々のフロート練習。「ひさびさの」つうのは「フロート」にかかる掛け詞らしい(^_^;。スケジュール帳を見返してみたら、昨年度のアンコン終了以後は３月、５月、７月に１回ずつ練習をしているだけだった。10/14の本番までに出来る練習の回数を数えてみたらあと３回。スタートは早かったけど、結局いつもどおりやんけ。

それにしてもフロートの練習は本当に面白い。音と言葉のやりとりは遠慮会釈ないけれど、ストレスはほとんど感じない。他の団体の練習では感じない種類の、何か絶対的な安心感があって、ラクールとかはまだ全然吹けてなくて出来は結構ボロボロだけど、きっとどうにかなるという楽観がある。当り前のように、自分の音が吹いただけ「フロートの音」として反映されるこの感覚からすると、例えば「なめら〜か」の練習なんか何をあんなに苦労しなくちゃいけないんだろう、という気分にさせられるのだった。

９月１７日

東京フィル定期を聴く（サントリーホール）。指揮はデイヴィッド・アサートン。ロンドン・シンフォニエッタの創設者ということで名前は知っていたがナマは初めてだ。仕事が長引いて到着が遅れ、後半の曲目（プロコフィエフのロメオとジュリエット）しか聴けなかった。前プロの小川典子さんのピアノ（モーツァルトのK467）聴きたかったなあ。
演奏はメリハリがあってなかなか良かったが（テナーサックスに福本信太郎が乗っていた）、テンポは全体に速めというか妙に恣意的で、あんまりバレエ音楽という感じではない。「ジュリエットの死」のあとに決闘の場面（「ティボルトの死」）が続くという演奏曲順も猛烈に違和感がある。そりゃまあ、音楽としてはその方が盛り上がるかも知らんけど、元の筋書きつうもんを考えたらヘンだとは思わないのだろうか？　指揮者が当初の発表どおりフェドセーエフだったらなあ…と思えてならなかった。

９月１５日

「なめら〜か」練習。出席者９人。演奏会１ヶ月前を切ったが、集まりはいまひとつ。仕方ないけど。練習は２回に１回は「まったりモード」になるという傾向があるようだ？

夜は横浜楽友協会サクソフォン・アソシエイツとの合同練習のため、保土ヶ谷公園内のかながわアートホールに移動。
23日の本番は19人編成の大アンサンブルになる。楽友協会の鈴市さんスペシャルアレンジの『ラデツキー行進曲』を練習。短い時間だったが楽しく吹けた。ソプラノで下のパートを吹くことは普段あんまりないが、気持ち良いこと！

９月１２日

都響Ｂシリーズ定期を聴く（サントリーホール）。

ヴァイオリン全員降り番（ストラヴィンスキーはヴィオラも出番なし）、という巷で話題のプログラム。普通やるかこういうこと。いかにも若杉さんらしい選曲だが、単なる思いつきのような選曲と思いきや、聴いてみるとその世界にすっと入って行ける感じがあった。沈静する祈りのようなバッハに、屈託のない、自然のままの素朴さを備えたブラームス（交響曲や協奏曲での肩肘張ったブラームスとはちょいと違う）。休憩後のストラヴィンスキーは、揺るぎなく動かない彫像のような崇高な讃歌だった。聴いたことのない曲だったのでCD（マルケヴィチ盤）を買って予習していたのだが、こういう曲は生のほうがずっと面白い。合唱もアマチュアとしては少人数（50人強）ながらよく統制がとれていて見事だった。

昨夜（日本時間）のアメリカでの同時多発テロ、飛行機がビルに突っ込む瞬間とか、世界貿易センター南タワーが粉々に崩れ落ちる瞬間とかの映像をリアルタイムで見てしまい、今日一日気が滅入って仕方なかったのだが、少しの間だけ癒されたような気がした。殊更に追悼演奏と称していた訳ではないが、何かそれに近い静かな集中があった。…音楽っていいな。

９月９日

昨日今日と山中湖に遊びに行ってきた。
富士五湖地方には高校生の時の合宿に始まって（普通の都立高校のくせに山中湖に寮を持っていたのである。今はないけど）、20年以上ほぼ毎年訪れている。今回のように楽器を持ってこないことは実は滅多にないが。

湖の東岸、ハリモミ純林のすぐ近く、ペンションすももの木というところに宿泊。見たところごくごく普通のペンションだが、建物の設計・施工まですべてオーナーの手作り（！）なんだそうだ。またオーナー自身の設計・製作になる「カトレア」というブランドの高級真空管アンプの発売元でもある。食堂には300B、845、VT-25A（すべて真空管の型番）といったカトレアのアンプが何台も置いてあって、セレクターで切り換えられるようになっている。スピーカーはエレクトロボイスの大型システム（ウーファーが36cm径くらいかな）。夕食の後、持ち込んだマルセル・ミュールのCDなどを聴かせていただく。うーむ良い音だ。機械で再生しているという感じが全然しない。我が家ではこういう音は出ないわなあ。
聴きながらオーナーとオーディオの話をする。「こんどアンプを作りに来てください」と言われた。1泊2日のカトレアアンプキット製作パック（設計者による丁寧指導付）というのをやっているらしい。さすがにエレキットの300Bアンプを作ろうとしている話は恥ずかしくて出来なかった(^_^;。
このペンション、交通は便利だし（東富士五湖道路の山中湖ＩＣに至近）、安いし食事は美味しいし、合宿で使えないかとも思ったが、合奏をするには食堂がちょっと狭いかな。

おりから近づきつつある台風15号の影響で天気は終日悪かった。それでも土曜日のうちはまだしもだったが、富士山は結局一度も姿を見せず。

9月9日午前10時の山中湖畔の風景。不穏な雲行きの下、プレジャーボート類もすっかり姿を消している。この数分後に豪雨に見舞われた。

　

９月７日

東京都交響楽団第534回定期演奏会を聴く（Ａシリーズ・東京文化会館）。都響秋のシーズン最初の定期は、今年没後100年を記念したヴェルディのオペラの合唱曲・バレエ音楽特集。合唱は二期会、指揮は若杉弘。
ナブッコ、マクベス、シチリア島の晩鐘、ロンバルディア、リゴレット、アイーダ、群盗、オテロ、トロヴァトーレ、椿姫、ドン・カルロ。よくこれだけの曲数を２時間ちょっとに収めたと感心してしまう。知ってる曲は『アイーダ』の大行進曲とバレエ音楽、『トロヴァトーレ』のアンヴィル・コーラス、そしてアンコールで演奏された「行け我が想いよ、金色の翼に乗って」（コレがなくちゃ！）だけだったが、様々に趣向を凝らした曲の並びに飽きず楽しんだ。ヴェルディの書くメロディというのはクローゼやブレマンのエチュードに雰囲気がよく似ていることがわかった。同じ時代背景の下にある音楽ということなのだろう。

朝刊に音楽評論家・志鳥栄八郎氏の訃報を見る。75歳。へえ、意外と若かったんだ、という印象があった。私が意識してクラシック音楽を聴き始めた10代の頃にはもう「大家」という感じの人だったから、もっとうんと年長だと思っていたのだが、当時まだ50代そこそこだったということか。私自身が40代に近づいてきたので、50代というのも昔ほど年寄りだと思えなくなってきている。
決して難しい言葉を使わない、確立された語り口は、ある意味いつも同じことしか言っていないような印象があって、クラシック初心者の域を脱してナマイキになってくるにつれこの人の著作は読まなくなっていたが、久々に読み返してみようかな。

９月５日

テレビマンユニオン会長の萩元晴彦氏が亡くなられた。71歳。「遠くへ行きたい」や「オーケストラがやって来た」といった番組を制作した、独立系ＴＶプロデューサーの元祖的存在であると同時に、個性派の音楽プロモーターでもあった。カザルスホールの開館以来総合プロデューサーを務めていた人物で、現在でも実質的にその立場にあった。（先日投函したカザルスホール・アマチュア室内楽フェスティバル(ＡＣＦ)の応募先はテレビマンユニオン宛だった）
10年前、私が当時所属していたカルテットでＡＣＦ（第５回）に出場したとき、終演後のパーティの席上、当時高校２年生だったソプラノ吹きのＳ嬢（のちに芸大に入り現在アムステルダムに留学中）をつかまえて長い時間話し込んでいた萩元氏の姿を思い出す。彼女が将来プロになって、このカザルスホールを満席にしてリサイタルを開く未来を夢想していたあの頃だった。その夢が未だ現実にならないうちに、いまやカザルスホールの命運は尽きようとしている。

９月２日

合宿終了後初の「なめら〜か」練習。午前はカルテット２チーム、午後はラージ。平穏に終わった。４時半で練習を終えた後は（なぜかみなとみらいホールの楽屋口でニジマス女史に遭ったり）、話し合いとかも特になく、まだ明るい中帰路につく。みんなで一緒に電車で帰るのってなんか新鮮だな。っていうか、普段の練習帰りが遅すぎると思うのだが。

あ、ところで、これが噂の「豪華裏番組」の証拠物件です。（みなとみらいホール・コンサートカレンダーより）

　

みなとみらいホール公式サイトにも載っている。→　こちら

９月１日

合宿が終わって以来バタバタしていて更新が出来なかった間に９月になってしまった。お待ちかねの皆様どうもすみません。

東京シティ・フィルの特別演奏会（オーケストラル・オペラ）、ワーグナー『ワルキューレ』全幕を観る（東京文化会館）。指揮は飯守泰次郎。
昨年の『ラインの黄金』に続く企画で、演奏会形式（オーケストラは舞台上にいる）とは言いながらほとんど実際のオペラ上演に近い工夫と演出の凝らされた舞台であり、５時間の長丁場（開演は３時で終演は８時近く）を全く違和感や不満なく楽しめた。素晴らしい。
驚いたのは昨年に比べてオーケストラが格段に上手くなったこと！　昨年感じたホルンをはじめとする管の危なっかしさや弦の薄さは跡形もないどころか、随所で聞こえる管セクションの和音の美しさ、純正さは在京オーケストラの水準を飛び越えたものにすら思える。シティフィルはこの１年聴く機会がなかったけれど、不覚だった。
歌手ではやはりブリュンヒルデの緑川まりが貫祿がある。先日の東フィルの『復活』で感心した小山由美のフリッカもなかなか良かった。しかし肝心のヴォータン役が声量がなくて（神々の長という役なのに！）残念。カーテンコールで、ブラヴォーの嵐の中ひとりでブーイングを浴びていた。

ちなみにチケットは３階サイドのＢ席で6000円だった。この水準のオペラ公演の値段としてはとっても安い。是非この勢いで『ジークフリート』と『神々の黄昏』も上演してほしいと願わずにはいられない。

…
そういえば先日のBSで放映された番組のことを書いていなかったな。長野の木下さんのご好意によりビデオを観ることができた。

2001年8月15日(水) BS2「クラシック倶楽部」
『ダフニスとクロエ』組曲第２番／ラヴェル作曲
組曲『展覧会の絵』／ムソルグスキー作曲＝ラヴェル編曲
　　（指揮）アンドレ・クリュイタンス
組曲『展覧会の絵』から　カタコンブ
　　（指揮）パウル・クレツキ
　　（管弦楽）フランス国立放送管弦楽団（1960年収録）

2001年8月16日(木) BS2「クラシック倶楽部」
交響曲第１番／ショスタコーヴィチ作曲
歌劇『タンホイザー』から　序曲／ワーグナー作曲
楽劇『ワルキューレ』から　ワルキューレの騎行／ワーグナー作曲
　　（管弦楽）フランス国立放送管弦楽団
　　（指揮）イーゴリ・マルケヴィチ
　　〜ブザンソン音楽祭1968にて収録〜

『展覧会の絵』で「古城」のソロを吹いていたのは若き日のデファイエだった！楽器にクランポンのエンブレムが映っている。替え指を使っている箇所もはっきり判別できる。これは貴重な映像だ。なによりも、クリュイタンス（映像を観るのは初めて）の華麗な指揮ぶり！「ダフニス」のフルートソロは名手デュフレーヌのようだ。
対してクレツキやマルケヴィチはずいぶんキビキビした指揮ぶりで、現代の指揮者たちに通じるものがある。特にマルケヴィチの、一切無駄な動きのない峻厳なまでの棒には思わず惹き込まれてしまった。いまどきのラジオ体操指揮者たちとは「似て非なるもの」だ。1968年の映像はだいぶ新しい感じがする。クラリネットの首席にギィ・ダンゲンが登場していた（これまた若い！）。